木枯らしの町(富樫倫太郎)
時代もので、一番心にせまるのは、武士の本分だ。
どうしても、避けられない負けるとわかっている果たし合いでも、果敢にのぞむ。
北村数馬は、わけあって、残党の残りから命を狙われる。
その間、ひっそり、寺子屋で暮らすがやはり、見つけられてしまう。
当時からお世話になった山寺の住職の言葉が心に残る。
命などくれてやるがいい。相手の命だけうばって、自分だけ助かろうなんて、虫がよすぎる。
おまえの命を奪おうとするものは、まさか、自分も死にたいとは思ってはおらぬだろう。しかし、おまえは命を惜しんではいない。最初から捨ててかかっておる。その違いは途方もなく大きいだろう。
たぶん、これは、仏教言うところの不自惜身命というもの。
おのれの命の持っていきかたを見定めるということ。
読んでいると、お江戸の時代のこの肝のすわりかたを今の若者に教えてもらいたくなる。
もうひとつは、数馬とその友のかかわり合いである。
なかなか、お互いの思いが通ぜず、悲劇に終結してしまうが、どの行為をとっても、心のそこでは、友としての観念が強くあるのだと心を動かさずにはいられない。
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