ハックルベリィ・フインの冒険(マーク・トウェイン、村岡花子訳)
これだけ魅力的な登場人物にあふれているとは思わなかった。
それは、善男善女なぞではない。
人として、最悪な飲んだくれの父親。
道徳観だけは、立派だが、それのみの価値観しか認めないダグラス未亡人や、ワトソン嬢。
逃げ出した黒人の奴隷ジム。
旅の途中でお世話を受けたグレンジャーフォード家。
詐欺師の自称公爵と王様。
トム・ソーヤー。
いやはや、聖人君子なんぞ、ひとりも出てこないのに、あくの強さで勝手に自滅したり、助かったり。
だからこそ、はがゆいほどの、癖がその人となりを魅力的に見せているのかと、ひとり、納得する。
そこらあたりの勧善懲悪主義のよいこの物語よりも、何百倍面白いかしれない。
それこそ、比較してなんだが、ハリポタなんぞ、お子様物語といわれてもしようがないとも思う。
たぐいまれな知恵とたぐいまれな行動力をもつということは、お金や地位がいかに虚飾の上になりたっているかを教えてくれる。
人類の英知という言葉をこれを読んで思い出した。
いっせい家畜状態にある人という動物の実態なんぞをついぞ比較したくなる本といっても過言ではない。
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