ワイルド・スワン/ユン・チアン
文化大革命というのは、おぼろげながら、歴史の中の一こまとして、記憶に残ってるくらいで、いったいなんなのかと具体的には理解できてなかった。
著者ユン・チアンは、そのまっただなかに生きてきた人。
内部の人間しか知り得ないことをかなり詳しく書き連ねてある。
なるほど、一読の価値がある書物である。
名だたるノンフィクションと言えども歴史に密接に関わる大事とひとりの人間としての生き様からの視点は、読むものを必ずや、深い考察の域に達するだろう。
はからずも、日本で共産主義が嫌われているということの意味がここにきて、ようやく理解できた気がする。
毛沢東という人物があまりに人格的におかしかったのか、それとも、共産主義というものを曲解しすぎていたのか、それとも、まわりにいたものが悪かったのか・・。
これほど民を恐怖政治で陥れた征服者はいなかった!
物質的ならず、精神的迫害もひどすぎる。
読みながら、北朝鮮がかぶってくる。
ひとりの独裁者。
そして、苦しめられる人民。
迫害と洗脳。
まさしく、地獄のような世界だ。
その中で、恵まれていた著者家族が生き延びられたのも奇跡に近い。
今の中国がどれだけ、そのときの傷を残しているのかは不明だが、この時代の破壊は、あまりにもすざましくて、中国三千年の歴史が歪曲するほどのものだったのではと思ってしまう。
しかし、人間ここまで残酷になれるのだろうか。
自分が助かるためには、人を陥れることが平気になるし。
そして、自分の理念を曲げないためには、自殺するしか道が残されず。
自己批判というあられもない弾圧で命を落とす人が次から次に出続けていく。
どこからどこまで読んでも、ひどすぎる内容に、これが真実だとうことにカルチャーショックさえ。
平和な国。日本。
平和ぼけした日本。
世にひどい話はたくさんあるけど、これほど悲惨な話はないと思う。
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