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変身(東野圭吾)

東野圭吾の本で読んでないものがあるなんて。
と、思いながら読み始めたけど。
やっぱり、読んでなかったと、くやしいやら、うれしいやら。
1991年発行なんだから、10年前に読んでてもおかしくないはずにのに、読んでなかったのね。
でも、楽しそうなご本なので、うれしいような気もする。

へんしーんと言うと、仮面ライダーやウルトラマンが完璧に違う何者かになるということが頭に浮かぶ。
けれども、これは、そういうものではない。
脳みそを移植するというSFではありがちなパターンかなとも思う。
クローンを扱ったものもその類いだろう。
まだ、解決済みではないと思うけれど、意識は果たして、人間のどこにあるのかという疑問へのひとつの提言かもしれない。
脳みそじゃないかなと言う人あり。
心臓だと言う人あり。
体じゃないという人あり。
けれども、人は死ぬと意識もへたくれもなくなる。
死んで、ここにいるとささやいてくれない限りは、千の風にのっての歌そのものじゃない。

一般論はさておいて。
この話であるが、なかなか興味深い。
何気ない日常から、事件に巻き込まれ、死んでおかしくない状況から生き返る。
それも、脳の移植という画期的手術のおかげで。
そのまま、楽しく暮らしました。めでたしめでたし。だと、小説にならない。
移植した脳に支配されていく。
それもとてつもない悪い方へと。
自分の行動や感情がそのものに支配されていくというのは、どうなんだろう。
ふたつの意識に分断されて、右足は右、左足は左というふうにごちゃごちゃになるということにも考えられる。自分というアイデンティディが損なわれていくというのは、複雑なものでもあり、多重人格だったか、あれでも、同じ顔かたちであるはずなのに、全く違う人に見えるというぐらいかわるらしいし、やはり、こわいことかもしれない。

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