名もなき毒(宮部みゆき)
何人か登場人物がいる中で、みんなにお尋ねしたい。
原田いずみのような人間はふつうか?
他人様に迷惑をかけることなく、たまには人に親切にしたり(電車でお年寄りに席をゆずるとか)家族を喜ばしたり、人が見てなくても、落とし物を交番に届けたりは、立派なことだった!
えーーっ!
現代は生きにくく、他を生かしにくい。
どういう意味だかわかりづらいかもしれませんが、常識ががらがらと崩れさることを教えてくれる恐ろしい本かも。
といっても、何もおどろおどろした妖怪や理不尽な輩がうしゃうじゃ登場するわけではない。
今流行りのクレーマーに匹敵する生態の仕組みがよくわかるということになっている。
さて、本題はコンビニで、紙パック性ウーロン茶を飲んで中毒死した事件に発していてる。
無差別殺人か、狙われたのか?
そして、異様に恐縮するコンビニの店員の正体は?
と、次次に新たな謎が絡み、なおかつ逆玉の輿に乗った素人探偵の杉村。
インパクト強いキャラも弱いキャラも重要な役目を秘めている。
冒頭あげた原田いずみをもう少し掘り下げたい。
ひと昔前に比べて、人間が少しおかしくなってきていることを年々感じている。
それは、表面には現れにくい、感情面や良識という部分が欠落している人間がいることである。人は誰でも自分を基準に考える。
まさか、本気の悪意で自分をだまそうと考える人がいるなんて及びもしないのがふつうだろう。けれども、いるのである。身近にも。
見かけで判断が困難な人が。いい人がいい人に見えるだけに、そのギャップがこわい。
というか、信じにくい。信じられない。または、信じたくない。信じない。
またの名を人格障害というくくりにまとめられたりもする。
病院に行くほどのひどさはない。日常生活もまとも。
ただ、関係性において、ひどく、疲れる手合い。疲れるくらいならばいいが、自分が死ぬような目に追い込まれる。
物語だけでは、すまなくなっている現実をこのたびもまざまざと肌に感じさせられた。
事件と世相とストーリーで十分楽しませてくれるご本でした。
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